地球環境問題,少子高齢化,格差問題など現在の政治・経済は不安材料が満ち溢れ有効な解決策もないままに混沌としております.また人々の価値観も大きく変化し,生活がこの先どうなるのか判らない不安な状況で,閉塞感に覆われています.このような時期にこそ,右往左往するのではなく,将来を見通し信念を持って行動することが重要です.ときしも学会創立50周年の時期でもあり,「繊維製品消費科学」の将来についても改めて考え直す時だと考えます.
これまで2回の消費科学シンポジウムでは,「持続可能社会のあるべき姿と生活・消費を考える」と,「安全・安心を創る」というテーマを取り上げました.いずれも生活・消費に大きな影響を与える課題であり,造詣の深い方を招いてお話を伺い,会員の皆様にとって大いに有益なシンポジウムであったと確信しています.
今回は,我々会員が「繊維製品消費科学」のあるべき姿(或いはありたい姿)を打ち出し,実現に向かって実行すべく,「繊維製品消費科学のこれからを語り合おう」というテーマにしました.
消費は,生活と密接な関係があります.消費者動向,ファッション,快適性,超高齢社会,地球環境をキーワードに,これからの学会をリードされる5名の講師の方に,大きく変化するであろう将来の生活像を描いて頂き,その実現に向けてこれからの「繊維製品消費科学」のあり方を論じていただくことにいたしました.なお5名の講師のお考えは学会誌の3月号から総説として順次掲載されていますので,前以って読んでおかれると理解が深まると思います.講演の後に,聴講者の方々にも議論に参加していただくパネルディスカッションの時間を設けます.
大学関係者も企業関係者も,多くの会員の皆様がこのシンポジウムに参加頂いて,議論を交わし,認識を共有し,「繊維製品消費科学会」をさらに発展させる契機にしようではありませんか.
なお,このシンポジウムは学会創立50周年記念事業最後の催事として無料で開催します.多くの皆様の参加をお待ちしております(参加証を発行しますので参加者は必ず事前のお申込みをお願いします).
[日 時] 2010年9月16日(木)10:30〜17:30(受付開始10:00)<終了しました。>
[場 所] 大阪樟蔭女子大学 円形ホ−ル(大阪府東大阪市菱屋西4丁目2番26号)
近鉄奈良線河内小阪下車5分(JR環状線鶴橋で近鉄奈良線に乗換え3ツ目)
[プログラム]
10:30〜10:40 挨拶 ………………………本学会会長(日本女子大学教授)島ア 恒藏
<講演 50分(質疑応答を含む)>
10:40〜11:30 1.消費者の求める新しい価値―消費者行動の変化と実態
……………………………………追手門学院大学 教授 辻 幸恵
これからは画一的な社会からの脱却とともに,消費者がいかに自由にいつでも満足を得て,生活を楽しむことが重要になると思われます.近未来の生活において,合理的な判断ができる賢い消費者像と賢い消費者が商品を判断する基準について,消費者行動研究の立場から語ってもらいます.
11:30〜12:20 2.ファッション・オン・デマンドとCGによるファッションイノベーション
……………………デジタルファッション(株)社長 森田 修史
ファッションは,生活にかかわるもの全ての一環であり,ライフスタイル(生活様式)の表現,自己表現の手段,コミュニケーションの手段と捉える立場から,海外からも評価を受けている日本のポップカルチャー,IT技術や器用なファッション技術力を融合するファッションイノベーションの現状と将来を語ってもらいます.
13:10〜14:00 3.健康で快適な生活と感覚計測技術
…………………東洋紡績(株)総合研究所 部長 石丸 園子
現代はストレス社会,格差社会,少子高齢化などからくる問題が山積しています.このような時代であるからこそ,心身ともに健康な生活を目指す快適性研究の役割は大きい.快適性はあいまいな感覚用語で表現されることが多いのですが,これを定量的に捉え商品開発に役立てる感覚計測技術の立場から,快適性研究のこれからを語ってもらいます.
14:00〜14:50 4.超高齢社会の衣生活と消費科学―衣服が変える近未来の生活環境
………………………………日本女子大学 教授 大塚美智子
人は,衣服をセカンドスキンとして装い,体を保護し,装うことで自己の内面を表現し,イメージを作り上げています.この身近な環境である衣服の機能を高度に高めていくことで生活環境を大きく変えていくことが期待されています.超高齢社会において,衣服にどんな機能が求められかについて語ってもらいます.
15:00〜15:50 5.地球にやさしい生活
……………………………………横浜国立大学 教授 大矢 勝
地球環境のためには省エネ・省資源が最重要課題ですが,同時に経済と両立しないと社会の活性が失われます.地球環境問題に対応する社会構築に向かうためには,消費者の価値観が変わる必要があると思われますが,非常な大きなハードルがあります.これからの生活のあり方や消費者教育のあり方,更には本学会の役割について語ってもらいます.
16:05〜17:30 6.パネルディスカション
【テ−マ】「繊維製品消費科学」のこれから
【パネラ−】5名の講師および島ア 恒藏(本学会会長)
【司会進行】原田 隆司(事業企画委員)
異なる立場からパネラ−間で討議をして頂き議論を深めるとともに,聴講者からの質問・意見も頂戴し,これからの「繊維製品消費科学」の方向を探っていきたいと考えています.